腕に位置する上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)は字の通り長頭と短頭の2つの頭(起始)を持ち、力こぶを作る筋肉として知っている方も多いのではないでしょうか。
また、上腕二頭筋の長頭腱(ちょうとうけん)は構造上ストレスがかかりやすく、普段から重たい物を持ち上げる方や、スポーツをする方には痛めやすい部位でもあります。
今回は上腕二頭筋の簡単な説明やストレッチ、トレーニング方法や上腕二頭筋と関係するケガについて紹介します。
上腕二頭筋の起始・停止
上腕二頭筋の起始は肩甲骨の関節上結節(かんせつじょうけっせつ)に長頭、烏口突起(うこうとっき)に短頭が付着しています。停止は前腕の橈骨(とうこつ)にある橈骨粗面(とうこつそめん)に付着します。
上腕二頭筋は肩甲骨から前腕の橈骨に付着する為、肩関節と肘関節をまたぐ2関節筋としても知られています。
支配神経
上腕二頭筋は筋皮神経(きんぴしんけい)により運動のコントロールが行われています。
作用
肘関節の屈曲、前腕の回外に作用します。
肘の屈曲と前腕の回外を同時に行うと上腕二頭筋が最大収縮し、力こぶの盛り上がりを確認することができます。
上腕二頭筋のストレッチ
上腕二頭筋のストレッチ方法をご紹介します。
- 手のひらを下に向けます。(回内位)
- そのまま後方に腕を伸ばし壁に手をつきます。この時、手は肩の高さと同じくらいの位置につきます。(これだけでも上腕二頭筋の硬い方はストレッチできます)
- 2の状態で上腕二頭筋があまり伸びていない場合は、その体制のまま少し膝を曲げていきます。筋肉が伸びているのが確認できたらその位置で15秒〜30秒を目安にキープします。
以上が簡単に行える上腕二頭筋のストレッチになります。
上腕二頭筋はパソコンやスマホの操作など生活の中でも使用頻度の高い筋肉です。
負担のかかった筋肉は重だるく感じるだけでなく、ケガのリスクも高まります。
ストレッチは筋肉の柔軟性を向上させ、負担の軽減にも効果的だと考えられます。
上腕二頭筋の鍛え方
太く、たくましい腕を手に入れるには、力こぶを作る上腕二頭筋を鍛える必要があります。
1人でも簡単にはじめられる上腕二頭筋のトレーニングをご紹介します。
アームカール
アームカールはダンベルを用いて上腕二頭筋を鍛えるトレーニングです。
- 手のひらを内側に向け、両手にダンベルを持ちます。肘は体幹の横で軽く曲げた位置からスタートします。
- 肘を曲げるにつれ、手のひらが上を向くように前腕をひねります(回外)。肘が完全に曲がりきる手前で止めます。(上半身が反らないように注意します)
- ダンベルを降ろす時はゆっくりスタートの位置まで戻します。
1〜3を繰り返し上腕二頭筋を鍛えていきます。
肘を曲げる動作に前腕をねじる動作を加えることで、上腕二頭筋の作用を利用し効率よく鍛えることができます。
運動初心者の方は軽めのダンベルを選ばれることをオススメします。
上腕二頭筋の長頭腱は痛めやすい構造になっている
上腕二頭筋の長頭腱は上腕骨の結節間溝(けっせつかんこう)と呼ばれる狭いトンネルを通ります。
この結節間溝を通る際、長頭腱の走行は水平方向から垂直方向へとなる特徴があり、ストレスを受けやすい構造になっています。
その為、スポーツや仕事で肩関節を酷使したり、重たい物を持ち上げることが多い方は上腕二頭筋に関するトラブルが生じやすいと考えられます。
肩関節の動きで摩擦され炎症が生じる上腕二頭筋長頭腱炎があります。
上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)
肩関節の繰り返しの動作などが原因となり、上腕二頭筋長頭腱が結節間溝内で摩擦を受け、炎症した状態を上腕二頭筋長頭腱炎といいます。
炎症による痛みは肩の前面に現れ、結節間溝部の圧痛や物を持ち上げたり投球動作で痛みが増します。
痛みを感じたら、運動や重い物を持つなどは控えるようにし、患部を安静にします。
痛みの軽減とともに無理の無い範囲でストレッチを実施し、上腕二頭筋を柔軟に保つことで長頭腱への負担を軽減できると考えられます。
上腕二頭筋長頭腱断裂(じょうわんにとうきんちょうとうけんだんれつ)
重たい物を持ち上げたり、急激に筋肉が引き伸ばされるなどの強い力が加わった際に「ブチッ」と断裂音がなり、上腕二頭筋長頭腱が断裂する場合があります。
断裂すると上腕二頭筋の筋腹は肘側に移動し、肩の前面の痛みや皮下出血、筋力低下を伴います。
一度切れた長頭腱は自然にくっつくことはなく、スポーツ競技者や筋力低下が著しい場合は手術の適用となることもあります。
しかし、日常生活に支障をきたす機能障害を残すことも少なく、経過とともに筋力もある程度回復する為、多くは可動域訓練や筋力強化を行い機能改善していきます。
まとめ
上腕二頭筋は肘を曲げる動作などで日常生活でもよく使われる筋肉です。
腕を鍛えて太くしたい方には上腕二頭筋のトレーニングは必須で、ダンベルさえあれば1人でも簡単に行うことができます。
また、スポーツや仕事など過度の負担により痛めてしまうことがある為、筋肉をよく使った後にはストレッチを行い、筋肉を柔軟に保つようにしましょう。